工場十貨店 想い
あるファッションメーカーで企画を担当していた私は、産地独自の技術に惚れ込み地方の小さな工場(こうば)さんと商品開発をつづけていました。昼夜を問わず試作を重ね、何度となくヒット商品を、世に送りだすことができました。
それらの多くはお客様に喜ばれ、たくさんの拍手をいただいた一方で、苦楽を共にしてきた地方の工場さんが直接、脚光を浴びることはなかなかありません。やがて、産地内の価格競争が激しくなり、いちメーカーの下請けという帰属性の前では非力な私が、力になることもできず、静かにその工場さんは倒産してしまいました。
しばらく経ってから、その工場の職人さんから「自分たちのブランドを作りたい」と電話がかかってきました。メーカーからの依頼ではなく、下請けの仕事ではなく、自分たちのための、自分たちのブランドを立ち上げたい。
普段は寡黙でモノづくりに向き合っている職人さんから、そんな熱い想いを伺いました。